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日本インテグリス株式会社 フィルターの基礎知識 「性能評価」編
目次 孔径、除去率 標準粒子捕捉試験 バブルポイント試験 孔径分布、空隙率 圧力損失/流量 液体用フィルターの圧力損失 ガスフィルターの圧力損失 フィルターの材質と適合性 代表的な樹脂の特徴比較 濡れ性 ガスフィルターの適合性 清浄性 粒子放出特性 ガス放出特性 耐腐食性
フィルターの性能評価 フィルターの基本性能である粒子除去性能および圧力損失は、ろ過膜の特性によって、ほぼ決定される。 このため、ろ過膜の特性を把握することが、非常に重要となる。 孔径、空隙率、流量、濡れ性、機械的強度等、様々な 項目について、ろ過膜の特性が評価されている。
ろ過膜の特性と評価方法
孔径評価方法(1) 標準粒子捕捉試験 既知の大きさ、濃度を有する微粒子(バクテリア、ポリスチレンラテックスビーズ等)を、フィルターにチャレンジし、ろ液中の粒子濃度を、培養、パーティクルカウンター等の方法により計測し、フィルターの除粒子を調べる方法。 フィルターの除粒子性能は、LRV(Log Reduction Value)、除去率、透過率等によって表される。 ポリスチレンラテックスビーズSEM像
(例) 105個/mLの粒子をフィルターにチャレンジし、二次側に漏洩した粒子濃度が1個/mLであったとき 除去率 = 0.99999 = 99.999% 透過率 = 0.00001 = 0.001% LRV = 5 フィルターの除粒子性能の表し方 除去率(Retention) ろ過前の流体中に含まれている粒子を、フィルターが捕捉する確率。 透過率(Penetration) ろ過前の流体中に含まれている粒子が、フィルターを通過する確率。 LRV(Log Reduction Value) ろ過前後の粒子濃度の比を、常用対数を用いて表した値。
標準粒子チャレンジ試験ライン
ガスフィルターの除粒子性能測定試験ライン Test filter CNC Membrane Filter Particle Counter Aerosol Generator Charge Neutralizer MFM Vent out Dilute Line Filter Isokinetic Sampler CDA N2 MFM MFM
Challenge flow rate: 30slm LRV of Ni Filter:>8.42 LRV of PTFE membrane: >8.42 LRV of SS Filter: 5.25 LRV of Ceramic Filter: 3.28 ガスフィルターの除粒子性能測定例
孔径評価方法(2) バブルポイント試験 適当な液体で十分に濡らしたフィルターに、気体による圧力を加え、微細孔から液体を押し出すときに要する差圧を測定することにより、フィルターの完全性を調べる試験。 ろ過膜の最も大きな細孔を測定する方法。 細孔の中が液体で満たされている膜を、気体により加圧する。 バブルポイント以下の圧力では、細孔内の液体を押し出すことが出来ない。 気体の圧力がバブルポイント付近になると、液体が細孔内から押し出され始める。 気体の圧力がバブルポイントに達すると、細孔内の液体が押し出され、気体の流出が観測される。
孔径分布評価方法 ろ過膜の孔径は、精密ろ過膜においても、ある範囲にばらつきがある。孔径のばらつき(孔径分布)は、ポロシメトリーという装置を用いて測定することができる。 フィルターが乾いた状態で Air もしくは N2 にて加圧し、その圧力とガス流量を測定記録する。ついで孔内全てにアルコールなどの液体を満たし(フィルターの孔が全て濡れている状態)、Air もしくは N2 にて加圧し、同様に圧力とガス流量を測定記録する。フィルターが濡れている場合、加圧されるに従い孔に満たされた液体が一番大きな孔径から抜けていき、徐々にガス流量が上がってくる。最終的には全ての孔から液体は除かれ、乾いた状態のガス流量になる。この乾いた状態と濡れた状態のガス流量を比較計算する事で孔径分布が測定される。
孔径分布測定例
空隙率 膜の全体積に占める孔の体積の割合を空隙率と言う。 一般的に、空隙率が高いほど、膜の抵抗は小さくなる。 空隙率は以下の式から求められる。 空隙率=1-
液体用フィルターの圧力損失 フィルターのろ過流量は、製品歩留まり、工程作業時間等に大きく影響する。 ろ過流量は、ろ過圧力を上昇させることで、大きくすることができるが、ろ過膜における差圧(上流側と下流側の圧力差)が、過度に大きいと、膜の物理的劣化が生じ、寿命が短くなることがある。また、ポンプへの負荷が大きくなることによって、ポンプの寿命が短くなる等の問題も生じる。 従って、必要流量に対して、圧力損失が極力低いフィルターを使用することが望ましい。
液体用フィルターの圧力損失の求め方 非圧縮性のニュートン流体が、層流にてメンブレンフィルターを 通過するとき、フィルターの圧力損失は、次式から求められる。 低流量領域では、粘性項(a・μ・u)が支配的となる。 ΔP = a ・μ・u + b・p・u2 ΔP : 圧力損失 u : 流速[cm/sec] a : 粘性項係数 b : 慣性項係数 μ : 流体粘度[mPa・s] p : 流体密度 純水、ほとんどの無機水溶液(HF,HCl,H2SO4,NaOH)および溶媒は、ニュートン流体であり、層流にてろ過膜を通過する。即ち、フィルターの圧力損失は、流体の粘度と流量に、ほぼ比例する。 通常、フィルターが適正な流量で使用される場合、フィルターの 圧力損失は、次式によって求められる。 ΔP = Q ・μ・R Q : 流量[L/min], μ: 流体粘度[mPa・s], R : フィルター抵抗[kPa/(L/min)/(mPa・s)]
PTFEメンブレンの10”カートリッジフィルター(孔径0.1µm)における純水流量と圧力損失実測データ。40L/min迄の流量域において、流量と圧力損失は、比例関係にあることがわかる。 液体用フィルターの流量測定例(1) 流量vs圧損
UPEメンブレンのPOU用フィルターを用いて、高粘度薬液(グリセリン+IPA)を流量1mL/secにてろ過したときの圧力損失実測データ。流量一定のとき、薬液粘度とフィルター圧力損失は比例関係にあることがわかる。 液体用フィルターの流量測定例(2) 流量vs粘度
液体の粘度の温度、圧力による変化 一般的に、液体の粘度は、温度の上昇とともに低下し、圧力の増加とともに増加する(ただし圧力の影響は非常に軽微)。 温度による液体の粘度変化を求める式 η=A exp (B/T) η :粘度[mPa・s] η=A exp (B/T-C) T :温度[K] η=C/(1 + At + Bt2) t :温度[˚C] A, B, C :定数 圧力による液体の粘度変化を求める式 η=A exp (Bp) η :粘度[mPa・s] p :圧力 A,B :定数
有機化合物の粘度 [mPa・s=cP] 無機化合物水溶液の粘度[mPa・s=cP] 日本化学会 化学便覧基礎編 改訂3版より抜粋 液体の粘度
ガスフィルターの圧力損失 気体は、圧縮性流体であるため、ガスフィルターの圧力損失は、フィルター入口側の圧力に依存する。即ち、同流量においては、入圧が高い程、圧力損失は小さくなる。 一般には、必要とする流量に対して、0.01MPa程度以下の圧力損失を示すフィルターが推奨される。 ガス流量A [slpm]、フィルター入口圧P1のとき、圧力損失がΔP1であるフィルターにおいて、ガス流量A [slpm]、フィルター入口圧P2のときの圧力損失ΔP2は、 ΔP2 = ΔP1*P1/P2 (但し、入り口圧P1, P2は絶対圧)
ガスフィルターの流量測定試験ライン
* 同じガスフィルターであっても、入口側圧力を変えることによって、異なる流量曲線を示す。 ガスフィルターの流量測定例
液体用フィルターの材質と適合性 多くの液体用フィルターは、樹脂製の部材から構成されている。 化学的適合性、物理的強度、耐熱性、濡れ性、経済性等を考慮して、最適な材質からなるフィルターを選定する必要がある。 また、ろ過膜の材質だけではなく、フィルターを構成するその他の接液部材(コア、スリーブ、ハウジング、O-リング等)と使用薬液との適合性についても考慮する必要がある。
フィルターに使用される主なフッ素樹脂系素材 四フッ化エチレン樹脂 Polytetrafluoro-ethylene (PTFE) パーフルオロエチレンプロピレン樹脂 Fluorinated ethylene-propylene (FEP) パーフルオロアルコキシ樹脂 Perfluoroalkoxy (PFA) エチレン-クロロ三ふっ化エチレン樹脂 Ethylene-chloro-trifluoroethylene copolymer (ECTFE) ビニリデンフルオライド樹脂 Polyvinylidene fluoride (PVDF)
ポリエチレン樹脂 Polyethylene (HDPE, UPE) ポリプロピレン樹脂 Polypropylene (PP) ポリスルフォン樹脂 Polysulfone (PSF) ポリエーテルスルフォン樹脂 Polyethersulfone (PES) 66ナイロン樹脂 Nylon 66 フィルターに使用されるその他の樹脂系素材
代表的な樹脂の特徴比較 ◎非常に優れる △やや劣る ○良好 ×劣る (注意) *上表のランク付けは、各樹脂の比較による相対評価により行なった。 *上表は、参考資料であり、各樹脂の耐久性を保証するものではない。
濡れ性とは 液体と固体が接する時、これらの表面のなす角(濡れ角)が<90˚である場合、“濡れる” という現象を生じる。濡れ角が0˚では、その固体表面を液体が完全に濡らしている。 濡れ角(濡れ易さ)は、液体の表面張力と固体の表面エネルギーによって決まる。
濡れ角を決定する要素 γSL:固体液体間の界面張力 γL:液体の表面張力 γS:固体の表面エネルギー θ:濡れ角
主な樹脂と液体の表面自由エネルギー 固体は臨界表面張力γcで表わす。 臨界表面張力は表面張力γLが既知である多種液体にて固体表面との接触角を測定し接触角θがゼロ(cosθ=1)となる点。 一般的に無機薬品の表面張力は高く有機薬品は低い 一般的に同族列の物質は分子量Mが増えると表面張力γは大きくなる(n-アルカン、n-アルコール)。
PTFEメンブレンとUPEメンブレンの濡れ性 PTFEメンブレン(18.5 mN/m) UPEメンブレン(31 mN/m)
ろ過膜と濡れ性 液体が、ろ過膜を濡らすことが出来ないとき、その液体は、ろ過膜の微細孔内部に浸透していくことができない。つまり、そのままでは、ろ過を行うことができない。 例えば、表面エネルギーが非常に低いPTFEを材料とするろ過膜は、純水および水系の薬液を直接流すことができない為、前処理が必要となる。 薬液のろ過を行う際には、フィルターの濡れ性を事前に確認しておくことが、非常に重要となる。
ガスフィルターの適合性 インテグリスが採用しているガスフィルターのろ過メディアは、殆どのガスに対して適合性を有する。 しかし、一部の特殊ガスまたは使用条件によって制限される場合がある。 ステンレス 使用不可:O3 ニッケル 使用不可:AsH3, CO, O3 使用制限:B2H6, PH3, SiH4 PTFE 使用不可:F2 使用制限:最高使用温度≤120˚C
ガスフィルターの適合性
ガスフィルターの清浄性(1) 初期粒子放出特性(シェディング) フィルター自身が粒子汚染源とならない為に、下流側に粒子を放出しない、あるいは放出粒子が極力少ないことが要求される。 初期放出粒子の発生原因 フィルター二次側に付着残留していた粒子の脱離 不適切あるいは不十分なフィルターの洗浄が原因となり得る。 脈動によるろ材のバタツキやこすれによる発塵 ろ材同士あるいはろ材とハウジングとの擦れが生じると、継続的に粒子を放出する。フィルターの構造に問題がある可能性がある。 フィルター二次側に混入した外部粒子の再放出 パッケージ開封および封止キャップ取り外し後、大気下で長時間放置されたフィルターにおいて発生し得る。
SEMATECHが定めた、ガスフィルターの粒子清浄度を評価する標準試験方法(93021511A-STD)。試験流量は接続配管径によって異なる。 ガスフィルターの初期粒子清浄性評価方法
SEMATECH Particle Shedding Test Apparatus
初期粒子清浄性評価例
ある種の揮発成分が、プロセスに悪影響を与える場合もある。フィルターが、不純物と見なされるガスを極力放出しないこと、あるいは素早く減少することが要求される。 脱ガスの発生原因 フィルターの素材に由来するもの フィルター洗浄時の残渣 不十分な乾燥 製造環境からのコンタミネーション 包装材からのコンタミネーション フィルター取り付け時、フィルター内部に混入する外気成分 (水分、酸素、窒素等) ガスフィルターの清浄性(2) ガス放出特性
RGA (Residual Gas Analyzer) 試験装置
清浄なガスフィルターを通気したヘリウムガスのマススペクトル ハイドロカーボンにより汚染されたガスフィルターを通気したヘリウムガスのマススペクトル RGAによる脱ガス清浄度試験例(1)
M/Z=18 (H2O) RGAによる脱ガス清浄度試験例(2) Room Temp. 100℃ Cool Down
耐腐食性能 部材に金属材料を使用しているフィルターが腐食を生じると、粒子汚染および金属汚染の原因となり得る。フィルターは、粒子除去効率を上げる為、他の部品(バルブ、配管等)に比較して圧倒的に大きな表面積を有しており、耐腐食性が特に重要となる。 腐食に影響する因子 フィルター材質(SUS316L低サルファー材、ニッケル、ハステロイ等) 接ガス部の平滑度(機械研磨、電解研磨等) 熱履歴(特に溶接部) フィルターの構造 耐腐食性向上処理の有無(各種パッシベーション) プロセスガス導入前のガスデリバリーシステムのパージ プロセスガス中の水分濃度
SUS316L製ガスフィルター腐食試験 SUS316L製メンブレンを有するガスフィルターに、一般産業用塩化水素ガス(純度99.7%以上)を、流量50sccmにて30min供給した。 塩化水素ガス暴露後、ドライ窒素によるパージを、流量50sccmにて2時間行った。2時間経過後、フィルター前後のバルブを閉じ、6日間、窒素を封入した状態でフィルターを静置した。 静置後、再度ドライ窒素によるパージを、流量50sccmにて4時間行った後、フィルターの粒子清浄度試験を行った。
Steady flow Steady flow with Impact Pulsed flow Steady flow HClガス暴露後粒子清浄度試験結果
by NihonEntegris | Added: 1 year ago
Language: Japanese | Topic: Science & Hi-Tech
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